【日本平和委、中四国・群馬・神奈川】
米軍機の低空飛行訓練の中止を求める日本平和委員会と
関係県の平和委員会代表による外務省交渉の内容(メモ)
日本平和委員会は4月23日、全国で被害が深刻化する米軍機の低空飛行訓練の中止を求め、外務省交渉を行いました。これには、日本平和委員会の佐藤光雄代表理事、千坂純事務局長、岡山県・中尾元重名誉会長、山口県岩国・吉岡光則事務局長、広島県・湯川寛子代表理事、高知県・和田忠明事務局長、徳島県・米澤正博事務局長、群馬県・小田暁夫事務局長、神奈川県・鈴木和弘事務局長が参加。外務省北米局日米地位協定室・上野裕大課長補佐が対応しました。
外務省応接室に通されると、異例の形で、参加者分のペットボトルが用意され、担当官は「ようこそ遠いところからいらっしゃいました。ご苦労様です」とひたすら低姿勢で出迎えました。しかし、答弁は相変わらずのものでした。
①騒音等の被害状況は都道府県から情報をうかがっている。しかし、低空飛行訓練は我が国を守るための訓練なので、中止を求める考えはない。ただ、学校や病院の上の飛行については、ルートの変更を求めている。国内法を尊重するという日米合意を守ってほしいと要請している。
②米軍の運用については承知していない。米軍に情報開示を求めることは考えていない。
③岡山の米軍機による土蔵崩壊被害に対する補償については、防衛省で対応している。おばあちゃんが精神的にまいっていることはうかがっている。
④駐留米軍に受け入れ国の国内法を適用しないのは国際ルール。ただし、国内法を尊重することについては努力をしている。米軍は厳しい激しい訓練のなかでもそうした意識はあると認識している。したがって合意を変更する意思はない。米軍は最低高度を守るようにしている。日米地位協定の改定は考えていない。運用の改善が早くて効果的。
⑤日米地位協定がドイツやイタリア、韓国の地位協定と比べて劣っているという認識はない。(イタリアなどで米軍訓練計画のイタリア側司令官の許可が必要とされることなどについては認識していないと答えた)。
これに対し、参加者からは、各地の深刻な被害実態を踏まえた追及が行われました。
■高知の和田事務局長は、1994年に起きた高知県嶺北地方本山町の早明浦ダムへの米軍機墜落の事故調査報告でも、低空飛行による急激な旋回でパイロットが失神状態になったことが報告されていることを指摘。「なぜ、そんな急激な旋回が行われるか?それは蛇行する渓流に沿って、谷間を低空飛行するからだ」とその危険を強調しました。そして、「昨年来また嶺北地方での米軍機による低空飛行が増加している」と、本山町役場の低空飛行記録データを示し、「昨年11月には、防災訓練で防災ヘリが飛んだ直後に、同じ場所を米軍機が3機いっぺんに飛来した。このコースでは、昨年4月~今年3月まで、50回ドクターヘリが飛んでいる。こんなことが主権国家として許せるか? これで日本国民の命を守れるのか?」と迫りました。
これに対し、外務省の担当官は、「この問題は高知県庁から聞いている。米軍に防災訓練をしているときは飛ばないよう要請している」と省内で検討されていることを明らかにしました。さらに、和田氏の追及に担当官は「防災訓練計画を米軍に知らせるようにする」と述べました。しかし、参加者らは、「それは最低やるべきだが、防災訓練は他の地域でもやられている。しかし、外務省は米軍の運用について承知しない、飛行ルートも知らないと言っている。すると、低空飛行訓練をやめるしか、防災訓練ヘリへの事故を防ぐことはできないではないか」と追及しました。
また、「では、緊急に飛ぶドクターヘリはどうやって米軍に伝えるのか? ドクターヘリは緊急に出動し、10分、15分で展開する。それを米軍に伝えて、米軍機が回避する措置を取ることができるのか? 高知ではドクターヘリは1年間で375回、1日に1回飛んでいる計算になる。それを回避できるのか?」と迫りました。すると担当官は、「確かにこれはむずかしい。私たちも頭を悩ませています。対策を考えます」と述べざるをえませんでした。参加者は「結局、低空飛行訓練をやめるしか事故を防ぐ道はない」と求めました。
それでも担当官は、「日本を守るための訓練なので、中止を求める考えはない」との立場を崩しませんでした。「では、何のための訓練なのか?」と聞くと、「敵のレーダーを回避して行動する訓練」と述べました。これに対し、参加者からは「それは日本国内ではなく、まさに敵地に侵攻して、敵のレーダーを回避して、攻撃するための訓練ではないか」「そんな訓練がなぜ『日本防衛』のために必要なのか?」と、次々に批判。担当官はまともな説明ができなくなりました。
参加者からは各地の深刻な被害の実態が訴えられました。「低空飛行の高度を計測したら、高度100メートルだった。飛行ルート下には病院も学校もある。低空を高速で有視界飛行をするなかで事故の危険は重大だ」(徳島)、「広島県北では電柱のすぐ上を飛んでいる」(広島)、「人口密集地の前橋の市街地上空でくりかえし旋回飛行を行っている。厚木基地で艦載機のパイロットに、市街地の写真を見せて聞いたら、競輪場の丸屋根を標的にして訓練をしていることを認めた。市街地で建物を標的に訓練するなど、他の国でやられているのか? どんな理由があろうと、主権国家ならこんな訓練は認めるべきではない。また、最近は山岳地帯で、月300回もの米軍機の飛行が確認されている」(群馬)、「昨年3月、津山市での米軍機低空飛行訓練による衝撃波で土蔵が崩れた事故では、その寸前までおばあさんが土蔵近くにおり、すんでのところで人命を奪いかねない事故だった。しかし、米軍は1年たってやっと米軍機による事故であることを認め、損害の補償交渉に応じたが、いまだに米軍による当事者への謝罪はない。こんなことを認めるのか」(岡山)、「編隊で市街地上空を飛行訓練している」(岩国)――など、深刻な実態が次々と突きつけられました。
担当官は、そのたびごとに「米軍は最低飛行高度や国内法を守っているはず」などと弁明しましたが、これらの事実の前に、まったく説得力を持たない状態になりました。
参加者らはまた、「米本国では野生生物に悪影響を与えるからと、厳しい環境アセスメントで低空飛行が自由にできない状況がある。それなのに日本では住民の上を低空飛行して被害を与えている。日本国民は野生生物以下とみなされているのではないか」と追及しました。
岡山の中尾氏は、「各地で自治体が騒音測定器を自分で設置するなど、やむを得ず実態を明らかにし、政府に中止を求める取り組みをしているが、自治体任せにせず、政府の責任において実態把握の体制をつくり、実態を明らかにすべき」「岡山の土蔵崩壊事故について、防衛省は物損についての実費の弁償はすると言っているが、精神的被害や事故処理のための休業については補償しないと言っている。こんな態度は改めるべき。国民を守る立場で交渉すべきだ」などを求めました。
参加者らは、「結局、敵のレーダーを避けて山間を低空で飛ぶ低空飛行訓練と住民の安全は両立できないことは明らかだ。政府は住民の安全を守るために、アメリカ政府に対し、ちゃんと低空飛行の中止を求めるべきだ。どんな理由であれ、国民の命と安全を脅かすことに対し、声をあげるのが主権国家として当然の最低限の立場ではないか。ところが、政府は米軍が必要とする訓練や運用には口を出さないという立場をとり続けている。地位協定を変えて国内法を守らせ、低空飛行を中止させようとしていない。この結果、各地で深刻な被害が生まれている。これでは国民の命と安全を守れない。アメリカの要求を優先させる立場に立つのか、それとも主権国家として、国民の命を脅かす危険な訓練はやめろと米国政府に毅然と要求する国民の立場に立つのかが問われている。いまのようなアメリカいいなり、占領状態の継続のような態度は改めるべきだ」と強く要求しました。
(2012年5月6日 日本平和委員会事務局長・千坂純)